■ 1-1 ■


 カタリと音がした。
 何の音かはわからない。
――なんだろう、確かめなくちゃ。
 自分は修司のいない間、この部屋を守らなくてはならない義務がある。
 しかし亮の目は開くことができない。
 身体が泥のように重い。
 手足が凍えるように冷たくて、がたがたと震えが走る。
 亮の熱はまだまだ上がっているらしかった。
 再びガタンと、今度は少し大きな音がする。
――しゅう兄、忘れ物?
 修司が出て行って四時間は経っていたのだが、亮にはその時間感覚がなくなっている。
 うとうとと浅い眠りを彷徨っていた亮には、まだあれから一時間程度しか進んでいないような気がしていた。
 亮の部屋の扉がそっと開く。
 足音はほとんど聞こえなかった。
 しかしその影はゆっくりと亮のベッドへと近づき、毛布の中で震える亮の顔をのぞき込んでいた。
「……しゅ、に?」
 ふるりと瞼が震え、亮の目が薄く開く。
 その瞬間、亮の身体は強い力に押さえ込まれ、強引に引き出された手にはひんやりとした何かが、ガチャリとはめ込まれていた。
「っ!? な…に? っや――」
 暴れる亮の身体にその影は馬乗りでのしかかり、もう一方の手も、同じ種の輪ではめ込まれる。
 亮は突然の襲撃にパニックを起こし、めちゃめちゃに暴れた。
 両足をめいっぱいばたつかせ、両腕を振り上げる。
 しかしその影はそんな亮の抵抗などどうということもないらしい。
 影は亮の手を拘束した手錠を、慣れた手つきでベッドの上部に固定していく。
「ゃ、やめろっ、はなせっ、何すんだよ、このやろーっ!」
 それでも暴れようとする亮のみぞおちに、ためらいもなくその影は、深く拳を突き入れていた。
「っぐぅ――」
 鈍い音がして亮の動きが止まる。
 あまりの痛みで、亮の視界が暗く沈み、意識が消えていく。
「――さて、亮さん。やっと静かになりました」
 淡くなった意識の中で、そんな言葉が聞こえた。
 この声は、誰の声だ?
 しゅう兄じゃない。
 しゅう兄はこんな、嫌な声じゃない。
「お風邪ですか? ちょうどよかった。いい薬がありましてね。すぐ――楽にして差し上げますよ」
 男の手には一服の粉薬が携えられていた。
 とんとんと指で粉を落とし、薬袋を破っていく。
「くす…り?」
 意識の朦朧とした亮の口を無理矢理こじ開けると、その男は淡いピンクの粉末を、全て放り込む。
 力なく手足を動かす亮の上に馬乗りになったまま、傍らに用意しておいた水を手にし、一気に亮の口に流し込んでいた。
「っ、ごほっ、ぅぇっ――」
 吐き出そうとする亮の口を閉じ、鼻をつまんでやる。
 呼吸の出来ない苦しさに、亮の足がシーツをかき、ガチャガチャと両手が鳴った。
 数秒後。コクリと小さく、亮の喉が動く。
「――ん、んんぅ、はっ、ぇほっ、かはっ」
 亮が口の中のものを飲み終えたとわかると、その男はゆっくりとその手を放していた。 
「はい、よく飲めました。――どうです? 甘いお薬でしょう?」
 男は亮の上から降りると、手にあった包み袋を丸めて捨てる。
 ゆっくりと亮の首がその人物へと巡る。
 亮はその時初めて、それが誰であるのか知った。
 ぼんやりとした視界の向こうに、見知った男が立っている。
「ああ、今日は少し乱暴でしたね。すいません。次からは、チョコレート味のゼリーにでも混ぜて差し上げましょうか」
「――た…きざわ」
「亮さんはチョコレート、お好きですよね?」
 目を細め唇を引き上げたその男は、父親の第二秘書。
 滝沢一巳であった。






「亮さん、どうしました? 胸をこんなに尖らせて」
 滝沢の指がゆるゆると亮の胸の飾りを弄り、立ち上がった小さな突起を摘み上げる。
「っ…は…ぁっ、や…」
 手錠を掛けられベッドの上に固定された亮は、明らかに恣意的に欲情を育てる指先に、首をいやいやと横に振ることくらいしか抵抗を示すことができない。
「おかしいですねぇ、私はただ風邪薬を塗ってあげているだけなのに……」
 肌蹴られたシャツの中にもう一本腕が忍び込み、亮の赤く色づき始めた果実を両方ともくりくりとこね回す。
「あ、あっ、んっ…やめ…ろ、変態、さわん…な」
 先ほど無理矢理飲まされた別の薬のせいか、亮の息はそれだけでどうしようもなく上がっていく。
 滝沢の節くれた指が動くたび、亮の中に痺れるような甘い感覚が駆け抜ける。
 それでも涙に潤んだ瞳で、亮は滝沢の爬虫類に似た顔を睨みつけ、唇をかんで声を殺した。
 こいつが自分を嫌っているのを彼は知っている。
 これはただの嫌がらせだ。
 発熱し学校を休んだ亮を心配して、修司が自分をここへ寄越したと、この男は言った。
 確かに兄は出張中である。だが、兄がこの男にそんなことを頼むはずも無い。
 こいつは今の亮の状態を知って、嫌がらせに来ただけなのだ。
 こいつもそう暇ではないだろう。飽きたらすぐに帰るはずだ。
 そう、亮は考えていた。
「その言葉、そっくりあなたにお返ししますよ。治療しているだけなのに、こんなにしてしまっているあなたの方が、おかしいんじゃありませんか?」
 滝沢の言葉通り、亮の二つの飾りは赤く色づき、まるで自ら弄ってくれと言わんばかりにすっかり立ち上がってしまっていた。
 そこを見せ付けるように、滝沢が舌を絡ませる。
「な…に!? やめ…」
 わざと音をたてて吸い付くと、軽く歯を立て、先端をちろちろと舌先がなぶる。右側の飾りは滝沢の指がしつこくこね回していた。
「っ、ん、やだ…あ、は、ぁっ、きも…ち…るい、」
「そうですか。それにしては、ここが大変な事になってますが」
 ベッドに上がりこんだ滝沢は、亮のそれをパジャマの上からゆっくりとさすり上げる。
 薄い布越しにわかる張り詰めた幼い欲望に、滝沢はちろりと唇を人舐めすると、パジャマの上から咥え込んだ。
「っ!?」
 何が起こっているのかわからない亮に微笑をもらすと、形をなぞるように何度も何度も舌を這わせる。滝沢の唾液と亮の先走りでぐっしょりと濡れそぼったそこは、次第にかたちを露にし、亮は恥ずかしさで身を捩った。
「ねぇ、亮さん。これは、なんです?」
 顔をそむけようとした亮は、続いて一気に引き降ろされたパジャマと下着に、反射的に滝沢へ顔を向けることになる。
 滝沢の目は眼鏡の奥で鈍く光り、亮のまだ未成熟なそれを悠然と視姦していた。
「やだ…」
 身を捩ろうとする亮の足を大きくM字に曲げ、抱え上げる。
 亮の白い尻も、淡く色づいた蕾も恥ずかしげもなく、この父親の秘書の前にさらけ出されていた。
 そこでやっと、この男がただ嫌がらせに来ただけではないということを悟る。
 熱と薬でぼんやりとした頭で、亮は必死に抵抗し、暴れる。
 しかし、両手に嵌められた鉄の輪は外れる筈もなく、ただ少年の手首に痛々しい血を滲ませるだけであった。
「やだ、…めろ、変態、殺すぞ、ばかっ!」
 しかし滝沢はそんな亮の様子に益々笑みを強めると、身体を屈みこませ、硬く尖らせた舌先を亮の小さな蕾に、捩じ込み始める。
「ん、や…そんなの…なんで…」
 自分の後孔に男が舌を這わせるその行為が、亮には信じられなかった。
 恐怖と恥ずかしさに涙が溢れる。
 しかし滝沢はその行為を止める様子は無い。
 あいた手で、立ち上がった亮の未成熟なものを掴むと、尖端を指先で弄っていく。
「あなたは少し、教育というものが必要なのですよ、亮さん。……大人には敵わない。大人の言うことは絶対だということを、私がこれからじっくり教えてあげましょうね」
 亮の先走りでクチュクチュと音をたてながら、滝沢はそう言った。
「修司さんはしばらくヨーロッパ支社から戻ってきません。私はその間に、あなたを好きに教育していいと、お父様から言われてきました。大丈夫。修司さんが帰られる頃には、あなたは決して大人の言うことに逆らわない、いい子になってますから」
 亮は恐怖で顔を引き攣らせた。
 父親が許可した。それはきっと、こういう事態も含めての事なのだろう。
 力の萎えた手足に鞭打って、亮は再び身体を捩る。
 しかし滝沢はそれを赦さない。
 ポケットから取り出したジェルを指に乗せると、亮の蕾を一気に突き立てた。
「っ、ん、っあ…」
 声にならない悲鳴を上げる亮の中を、グチュグチュといやらしい音をたて、長い指が何度もこすり上げる。
 今まで感じた事の無い感覚に見を震わせ、亮は何度も首を振った。
「まず、あなたは自分自身がどういう存在なのか、知るべきです。カッコウのヒナが成坂の財産を継げるというのですから、この程度の貢献は当然の事でしょう? ありがたいことに、お金持ちや有識者の中には、あなたのような子供がお好きな方がとても多い。頭の悪いあなたも、会社の為に働けるのです。こんな嬉しい事はないはずですがね」
「…っ、意味、わかんねーよっ! こんなの、変だよっ、オレ、会社とか財産とかいらないっ、どうでもいいっ、なのになんで……」
「―――今のままではとてもお客様の接待を任せられませんねぇ」
 しかし滝沢は亮の言葉などまるで聞こえていないかのように、首を傾げると、自らのズボンの前をくつろがせ、黒々と立ち上がった己のものを取り出していた。
 何をされるか理解し、亮が狂ったように暴れる。
 滝沢はそれを押さえつけると、己のものを亮の蕾にあてがう。
「あなたは卑しい存在なんですよ? 亮さん。こんな可愛らしい顔をして、綺麗な服を着ていても、あなたは人として扱われる価値はない。そして、私はあなたの先生です。あなたは私の下の存在だ。そのことを、今からたっぷりとわからせてあげますよ」
 滝沢は薄い唇をちろりと舐めると、一気に亮の中に押し入っていた。
 亮のそこは慣れていないせいで硬く、滝沢の侵入を拒む。あまりの痛みに、亮は悲鳴を上げていた。
 しかしそんなことには構わず、滝沢は腰を進める。
「っ、あっ、ん・・・んんんっ、っやぁっ、あぐっ…」
 身体を反らせて喘ぐ亮の身体を無理矢理折り曲げ、上からさらに深く滝沢は穿った。
「ひゃんっっ、」
「はは、まるで犬ですね、亮さん。そんなに気持ちいいですか?」
 もう言葉も出ない亮に嘲笑を浴びせ掛けると、滝沢はゆっくりと腰を動かし始める。
 ギリギリまで引き抜かれ、再び最奥まで突っ込まれる。今まで外部から干渉を受けた事の無い場所を、熱く硬いものがこすり上げていく。
 痛みと圧迫感、そして排泄の快感が、亮の中でぐじゃぐじゃに入り混じり、刻まれるそのリズムにあわせて、亮はただ声を上げるしかなかった。
「んっ、んっ、はっ、あ、っ、や、ぁっ」
 滝沢の右手が上から伸びてきて、亮の胸の飾りを捻るように摘み上げる。
「やぁん、っ、あぁっ」
 亮はそれにも敏感に反応し、身を捩る。
 滝沢は今度は上を突く様に腰を捻り上げた。
「―――っ!! ふぁっ」
 亮は瞬間的に走った電気のような感覚に、舌を突き出し身体を震わせる。
「ここがいいですか? こんなことを父親の秘書にされて、気持ちよくなってしまうなんて、本当にあなたははしたない子ですね、亮さん」
 滝沢の言葉も、もはや亮には意味をなしたものとして捉えることはできないようすだった。
 幼い亮自身は透明な涙を流し続け、亮の薄い腹をひどく濡らしている。
 いつも反抗的に噛み付いてくるこの少年が、いまや自分自身を忘れて滝沢の下で快楽に喘いでいる。
 空ろな眼で揺すられ続ける亮のどこか壊れたような顔を見て、滝沢の興奮はますます高まっていく。
 思えばこの少年とであった八年前から、彼をこうして陵辱したい思いにかられていたのだ。
 嫌がる少年を無理矢理組み敷いて、泣いて許しを乞わせる妄想を、何度となく滝沢はしてきた。
 それが今、現実となって滝沢の下で喘いでいる。
 滝沢はさらに膨れ上がる己のものを感じながら、亮の中を突き上げていく。
「っ、んっ、あっ、あっ、はぁっ、ひぐぅっ…」
 痛みを忘れるほどの快感が亮の中を突き上げ続け、悲鳴の中に甘い声が混じり始めた。
「亮さん、今、あなたが誰に何をされているかわかりますか?」
 そこであえて動きを止めると、滝沢は亮の耳元に口を寄せ、舌を差し入れながら問い掛ける。
 しかし亮はわけもわからず、いやいやを繰り返すばかりである。
 もう少しで放出できるのに、途中で止められたもどかしさで身じろぎする。
「ほら、目をあけて見るんです。あなたが今、誰にどうされているのか」
 亮はゆっくりと目をあけた。
 目の前に、眼鏡をかけた酷薄そうな男の顔がある。
 いつもと違うのは、その額に薄っすらと汗が浮かび、目に今まで亮の見たこともない欲望の光がらんらんと輝いている事だった。
 そこで、滝沢がもう一度だけ強く腰を突き入れる。
 亮はその快感に息を詰まらせ、大きく喘いだ。
「―――言ってごらんなさい。言わなければ、いつまでたっても終わりませんよ?」
 亮の乳首をくりくりと弄りながら、滝沢は亮の首筋に舌を這わせる。
「はぁっ…」
 亮は息を吐くとその感覚に身体を震わせる。
「…たき…ざわ…」
「そう。私はあなたの父上の部下である、滝沢です。その滝沢が、どうしました?」
「…入って…る…」
 吐息混じりに夢うつつで応える亮は、既に自分が何をされ、何を要求されているのか理解できてはいなかった。ただ機械的に、苦痛から逃れる為に言われたとおりに言葉を紡ぎだす。
「どこに入ってるのか、それではわかりませんねぇ」
「…レの中、に…たきざ…、入ってる」
「これが、どういうことか、わかりますか?」
 再び滝沢が大きく腰を突き入れる。
「ひぅっ…」
「亮さん。あなたは今、私に犯されているのですよ」
「…レ、今、たきざ…に、かされて…る…」
 言葉の意味を理解する前に、滝沢は激しく腰を動かし始めた。
 亮の身体などどうなっても構わないかのように打ちつけ、己の快感のみを追い求める。
「いっ、いぎっ、ぐっ、んっ、ひあっ、や、あっ、あんっ、た…きざわぁっ!」
 亮が嬌声の合間に滝沢の名を呼んだことに、滝沢は言い知れぬ快感を覚えた。
「言いなさい、ほら、今、あなたは誰にどうされてます?」
「ひんっ、あっ、は、た…ざわ、に、レ、おか…れて…、オレ、うぐっ、あっ、たきざ…あっ、入って、オレ、中、あっ、熱いよっ、たきざわっ、やっ、で…ちゃ、ふぁっ、はぁああああああっ!!!」
 亮は勢いよく己の腹に、白い飛沫を迸らせていた。
 それと同時に内壁が締め上げ、滝沢は動きを早める。
「ぅっ、は…ふううっ!」
 熱く蠢く亮の中にこれでもかと打ちつけ、絶頂に身体を震わせて中にたっぷりと注ぎ込んでやる。
 ぐったりとした亮は、その感覚にいやらしく身悶えする。滝沢はそれを満足げに眺め降ろすと、余韻を楽しんだ後、ゆっくりと己自身を引き抜いていた。
 ぽっかりとあいた孔からどろりと血の混じった白いものが流れ出す。
「さあ亮さん、次はどうしましょうか」
 ぎしりと体重をかけ亮の顔に顔を寄せると、ほぼ意識を手放した亮の手を、手錠から解放する。
 わずかに目をあけた亮はそれでもどうにか意思を示し、そこから逃れようと手足を動かした。
 しかし滝沢はそれを赦さない。
 亮の身体を裏返すと大きく尻を上げさせ、今度は後ろから亮を貫いていた。
「ひやぁうっ!」
「ふはは、やはり犬コロにはこの体勢が似合いますからね。そうでしょう? 亮さん」
 滑らかに動くようになったその腰を、こねるように回し入れる。
「はぁっ、も、や……」
「おや、私に意見できる身分に、いつからなったんです?」
 そう言うと、今度は挿入したまま亮を抱え上げ、下から突き上げる。
「ひやぁぁっっ!!!」
 亮は自らの体重でさらに奥まで滝沢を咥え込まされ、大きく反り返った。
 滝沢はそのままベッドで方向を変え、寝室の一角につけられた姿見に、亮の姿を映してみせる。
「ごらんなさい、亮さん。あそこに随分といやらしい子が映ってますねぇ。あれは誰でしょう」
 亮は空ろな目でそれを眺め、そして気づいたように何度もいやいやと首を振る。
「下のお口が美味しそうに滝沢のものを咥え込んでますよ。ほら……」
 そう言うと、何度も身体を上下させ、亮に出入りする濡れそぼったものを見せ付けてやる。
「っ、あっ、や、ぁ、も…ゆる…て…ねがい―――」
「いいえ、これは勉強なのですから、赦すわけにはいきませんよ。あなたが私の下であり、決して逆らえない事を理解し、私にこうされることが嬉しくて仕方なくなるまで、終わる事はないんです」
 挿入したまま、滝沢は亮の口をこじ開けると、指を差し入れ、その感覚を楽しむ。
 もう片方の手で再び立ち上がった亮の尖端を、ぐりぐりと強くこすってやった。
 亮の口からだらしなく唾液の糸が垂れ下がり、ひくひくと身体を震わせる。
「はぁっ、あっああ、やぁ、」
「つらいですか?」
 口を開けさせられたまま、亮は小さく頷いた。
 すでに熱は四十度を上回っていた。
「私のことが好きですか?」
 亮はこの状況から空ろな眼で、同じように小さく頷く。
「私にこうされる事が好きなのでしょう?」
 亮はまた、同じく頷いて見せた。
「では、私にキスしてもかまいませんよ? 今日だけは特別です」
 言われて、少し戸惑いを見せた亮は、それでもゆるゆると身体を捻り、滝沢の薄い唇にその唇をそっとつけた。
「これで終わりですか。これでは及第点はあげられませんね。私のことがとても好きなのでしょう?ならちゃんと口の中までキスしてくれないと」
 意地悪に言われて、亮は再び唇を寄せる。
 小さく口を開くと、おずおずと舌を差し出し、滝沢の唇を割って入り込ませる。
 滝沢はその小さな舌に吸い付くと、片手で亮の頭を固定し、覆い被さるように亮の口腔を堪能する。舌を絡ませ、唾液を注ぎ込み、咽る亮の中を味わい尽くす。
 ぴちゃぴちゃという水音に混じって、亮の喘ぎが苦しげに部屋を埋めていく。
 空いたほうの手で滝沢は亮の幼いものをいやらしくこすり上げ、腰を揺すってやった。
「ん、ぐぅっ…ふぅっ」
 目をあければ滝沢の顔がありえないほど間近にある。
 キスしながら敏感な部分を弄られている現実に、自分は今あんなに嫌っていた滝沢という男にいやらしいことをされているという実感が、亮の中で膨れ上がっていく。
 この後、自分はどうなってしまうのか。
 もうそんなことを考える余裕すらない。
 舌をからませあい、まるで恋人のように何度も深く口付ける。
 亮にはキスの経験すらなかったが、こんなに気持ちいいものなら、相手が滝沢でさえなければ誰でもかまわないのではないかとさえ思えてくる。
 しかし亮の僅かな休息時間はすぐに終わってしまう。
 亮の珍しく従順な態度に興奮した滝沢は、つながったまま亮を正面へ向かせ、再び突き入れ始めた。
 時折、舌を亮の胸に這わせ、尖った飾りに何度も吸い付く。
「はぁっ、あうんっ、そこ…やぁっ」
 亮はわけもわからずすぐ前で自分を揺する滝沢の頭を抱え込み、熱と薬で蕩ける感覚に自ら腰を動かした。
 滝沢に犯されていると言う屈辱的な事実すら、今の亮には快感を煽る為の材料でしかない。
 その亮の痴態に滝沢は我を忘れて己を突き入れた。
「亮さん、気持ちいいですか? 亮さん……」
「ふわぁっ、あふ、、気持ち…いいよ、あっ、あっ、オレ、きもち、ぃの」
「亮さん、滝沢の事、好きですか? こうされて、嬉しいですか?」
「あっ、あっ、はんっ、オレ、滝ざ…好き。滝沢に、いっぱい入れられて、うれし…よ」
 亮の胸を舌先でちろちろと弄い、片手で亮のものをクチクチと上下にこする。
 亮の快感の強いポイントを目掛けて、滝沢はこねるように腰を突き上げた。
「ふわぁ、…はぅん、き…ち、いいよ、滝沢…、あ、たきざわの、気持ちいいよぉ」
 それに応えるように、亮が普段からは考えられない言葉を洩らし続ける。
「亮さん、滝沢が好きですか? 亮さん?」
 滝沢も狂ったように同じ言葉を繰り返す。嫌っている筈のこの子供に好きだといわれる度に、今まで感じた事の無いほどの快感が滝沢の脳を痺れさせた。
「好き、たきざわ、好き、あっ、はぁっ、好き、もっと、オレ、中、滝沢の、もっと…」
 滝沢は亮をベッドへ横たえると、足を抱え上げ、再び深く亮を貫く。
「ひゃうぅっ!」
 反り返る亮の身体を抱きしめ、唇を貪ると、腰を打ちつける。
「うんっ、ひぐっ、あふぅっ・・・は、あんっ、とおる、中、たきざ…いっぱい、入って、は、ひぃっ、も、きちゃう、きちゃ…」
「亮さん、亮さん、亮さん、可愛い、亮さん……」
 滝沢は亮の中で跳ね上がり、それを締め付け蠢く亮の内側にさらに大きく硬くなっていく。
「亮さん、可愛い、亮さん、なんていやらしいんだ、あなたの中は、もう、私は…っ、はぁっ、っっっ!!!」
 滝沢はその瞬間自身を引き抜くと、亮の上に白い体液を大量に迸らせた。
「ひぎっ、ひゃうっ!!!!!」
 その衝撃に亮も嬌声をあげ、再び自身から快楽の雫を撒き散らす。
 顔や腹、胸にたっぷりと滝沢のものをかけられたその下で、亮はぐったりと瞳を閉じ、その上に覆い被さるように、滝沢は倒れこんでいた。


 あれから何日が経っただろう。
 亮はずっと寝室に監禁状態にされている。
 ただ、待遇はさほど悪いものではなかった。滝沢は以前より亮に優しかったし、行為自体も次第に慣れてきた。
 それが苦痛である事に変わりはなかったが、何度も飲まされた薬のせいで、あまり深くものを考えないですんでいるようだ。
 しかしシドや秋人と約束した、毎日バイトへ来るという契約はまるで実行できないでいる。
 このままでは本当に、この行為で会社の為に働き、お小遣いをもらって借金を返すほかなくなってしまうかもしれない。
 学校にもずっと行けていない。
 自分はこれからどうなってしまうのだろうか。
 足に繋がれた鉄輪を見つめ、亮はただぼんやりとした不安に心をたゆたわせるしかなかった。