■ 2-13 ■



「はい、治療終わり」
 レオンは面倒そうに手を振ると、目の前の患者用チェアに腰掛けた男に向かいそう言った。
「終わりって、なんだ、コレ」
 二十代半ばの青銀の髪の青年は、不服そうに大きな絆創膏の貼られた腕を突き出す。
「獄卒に噛まれたんだぞ!? もっとこう、包帯とか縫合とか、ベルカーノ能力とか色々あんだろうが」
「噛まれた? 歯がちょっと当たったの間違いだろ。擦り傷一つで大騒ぎしちゃって。それでよく獄卒対策部の部長が務まるね、ジオット様」
「わざわざクラウン名で呼ぶことないだろうが。嫌みなヤローだな」
 カウナーツ種のカラークラウンであるジオットは、昔なじみの友人にこう呼ばれることに慣れていないらしい。
 武力局・獄卒対策部という特級の危険任務に当たっている彼は、普段から生傷が絶えず、カラークラウンを襲名する前から医療局の常連である。
 『獄卒』とはセラ内においてソムニアのみを狙い、それを食らう存在である。
 ソムニアは覚醒した後転生し続け、ほぼ数を減らすことがない。年間数千人もの新しいソムニアが覚醒している為、世界にソムニアが増え続けてもおかしくはない。
 しかし、現状そうはなっていない。
 それは、ソムニアのアルマのみを食らう、『獄卒』と呼ばれる謎の意識体がいるためだ。
 獄卒は見た目普通の人間と全く変わらない姿をしている。
 その姿でセラ内にいるソムニアに近づき、不意を突いてそのアルマを丸呑みする。
 獄卒に喰われた者は、二度と転生することなく、存在を消滅させてしまうのだ。
 獄卒については研究局でも調査を進めているが、実験に危険が伴う為、なかなか思うように運んでいないというのが現状である。
 その獄卒についてわかっていることは二つ。
 一つは『彼らには知能らしき知能はなく、本能的に人間の姿を模してソムニアに近づき、ただ食らっている』ということ。
 もう一つは『彼らにソムニアの賦与能力で攻撃をしかけると、その能力を吸収し、さらに強化された存在となってしまう』ということ。
 この二つめの事実がわかるまで『獄卒は千差万別の能力を用いる』と言われ、多くのソムニアが犠牲になってきた。
 今はこういった情報が各所で知られるところとなり、獄卒が現れた場合、ソムニア達は攻撃することをせずとにかく逃げの一手を打つことを義務づけられている。
 そしてそんな相手を駆除するために組織されているのが、彼の従える『獄卒対策部』ということになる。
「文句言いたいのは私の方だ。今何時だと思ってんだよ。当直でもない私をわざわざ電話で呼び出して。時間外診療は一万円増しだよ?」
「しょーがねーだろ。今日の当直がリモーネだったんだから。大体、一万円っていくらだよ。この日本オタクが」
「なんだ、シュラ。まだうちのボスとケンカしてんのか? いい加減謝っちゃえよ。そんなことで安眠阻害される私の身にもなってくれ」
「謝るのはあの女の方だ。人がちょっと便座下げるの忘れたからって、接着剤で便座くっつけちまうことはないだろ!? 俺に座ってしろってのかよ!」
 そんなくだらない痴話げんかのせいで、深夜二時半に呼び出されたかと思うと、レオンは情けなくて涙が出そうだった。
 シュラ=リベリオンとベルカーノ種のカラークラウン、リモーネ=ソルティアがいい関係であることは、彼もよく知っていたが、まさかそれが自分に火の粉となって降りかかってくるとは思いも寄らなかった。
「まったく、昔なじみが眠れぬ夜を送ってるだろうに、おまえときたら平和そのものだな」
 ため息をつきながらカルテをしまう。
「あ? 何の話だよ」
「シドだよ。あいつが日本に足止めくらってんの知ってるだろ?」
 レオンの言葉に、シュラが「ああ」と表情を改める。
「聞いてるよ。今東亜地区を騒がしてる、凶悪ソムニアの正体があいつだと見られてるんだってな。なんでもイザ種で刀使ってる奴が犯人だとかで、東京支部はシドをマークしてるって聞いたぞ。でもそれで日本に封鎖ってのもよくわかんねーんだけど。捕縛するならセラ内だからリアルの国は関係ないのに――」
「え!? おまえ、知らないのか? そんなことで封鎖くらってるわけじゃないぞ!?」
 シュラはレオンの言わんとすることが全く見えてこず、不機嫌そうに無言で眉をしかめた。
「ゲボだよ。新しいゲボ。百年ぶりに見つかっただろ」
「――あ? ああ、そう言えばそんなニュースを聞いた気も・・・」
「シュラぁ。おまえどんだけ世の中に疎いんだよ」
 ため息混じりに頭を抱えてみせるレオンに、シュラがムッとする。
「しょうがねーだろ! ここ一ヶ月、やたら獄卒がうじゃうじゃ発生してんだから! 俺は毎日、寝る間も惜しんでセラに入り浸りなんだよ」
 それは寝てるのと同義だと突っ込んでやろうかとも思ったが、話をこじれさせるのも面倒なので、レオンは話を続けた。
「その新しいゲボ、シドが隠して手元に置いてた子なんだよ。つまり、シドの恋人」
「――っ!!!!!!!!!!!!!!」
 驚愕のあまり、シュラの映像に一時停止がかかった。
「――かどうかは知らないけど、まぁ、大事な子だってのは確かだね」
「!!!!! ――っごはっ、おまえ、俺の心臓止める気か!?」
 停止解除になったシュラが、がっくりと頭を垂れる。
「確かに何代か前までのあいつは、股間が乾くヒマもなかったかもしれん。でもここ二代くらいは、修行僧ばりに浮いた噂の一つもなかったじゃないか。それを今さらよりにもよって、あいつの苦手なゲボの女なんて――」
「女じゃないよ?」
「――は?」
「だから、新しいゲボは男の子。亮くんっていって、十五才の超かわいい仔猫ちゃん」
「・・・。でも、なんだ。別にただ匿ってただけなんだろ? 俺は、その子の性別に驚くこともないんじゃないかと思うわけだ」
「まぁね。ただその子、GMD中毒でさ。シドが熱心に治療してあげてたのは事実みたいだよ?」
「――っ!!!!!!!!!!!!!!」
 目を見開いたまま、シュラの口が音もなく、「じー、えむ、でぃー」と動いていた。
「理事会もそのことわかってるから、シドが本部に亮くんをさらいに来ないように、日本に足止めしてるってわけ。――おい、聞いてんの、シュラ」
 しばらくポカンと口を開けたままだったシュラは、レオンに揺すられて大きく息をつく。
「あ、ああ。俺、やばいな。ニュースってのはちゃんと知っとかないと、時代に取り残されちまうもんなんだな」
 驚きのあまり妙なところを反省し始めたようだ。
「それで今は日本語の堪能な私が、シドの代わりに亮くんの主治医をしてるってわけだ。――まぁ、まだノック・バックは起こってないんだけどね」
「はぁ、あいつがねぇ。なるほどぉ。やっぱあいつ、野獣の如きエロの血は抜けきってなかったんだなぁ。GMDかぁ」
 腕を組み、やたら感心して首をひねる。
「それがさぁ、なんかおかしいんだよね」
「そりゃそうだろ。あのシドが少年ゲボをGMD漬けにして独り占めだぞ? あんのむっつりドスケベ、ありえねぇ!」
「そうじゃなくてだなぁ。ガーネットのことだよ」
 不意に見せたレオンの深刻な様子に、シュラが顔を上げた。
「ガーネットがどうかしたのか?」
「ガーネットの亮くんに対するやり方、ちょっと尋常じゃないんだよ。目覚めて二ヶ月だから、何も知らない亮くんを指導するって意図はわかるんだけど――。一日三件、四件のゲストってどう思う?」
「はぁ!? なんだそれ、いつの時代の話だよ! 今は中世じゃないぞ?」
「だろ!? でも現状そうなんだ。一昨日も初めてココに来て、何も知らない亮くんを、ライラックの奴がレイプまがいにやっちゃってさ。それなのに、ガーネットときたら、ライラックじゃなくて亮くんを叱ったらしいんだ。顔も身体も痣だらけにされてて、もう見てられなかった」
「ガーネットがシドを嫌ってるのは知ってるが、だからといってその子にそんな当たり方、するとは思えないんだがなぁ」
「私が彼女に意見することもできないし、ドクターストップも多用すれば担当医をチェンジされる。どうしていいか、ほんとに参ってるよ」
「セブンスのことには口出しできない風潮があるからな。カラークラウン持ってるとはいえ、部署のまるで違う俺なんかも発言権はないし――。あそこはガーネットが絶対の場所だからな」
「せめてビアンコにこの事を上げられればいいんだけど――」
「あの人は忙しすぎていつもどこにいるかわからんからなぁ。しかも一度任せた部下には全幅の信頼を置いて仕事をさせるし――。とにかく、俺も時間が許す限り、セブンスにリザーブ入れてみるか」
「頼むよ。ちょっとでもあの子、休ませてあげて欲しいんだ」
「なんだ? もしかして壬沙子から何か頼まれてんじゃないのか? やけに熱心だな」
 ニヤニヤとシュラが笑ってみせると、レオンが苦い顔で笑った。
「まぁな。彼女も今はシド側に見られてるから発言権はないし。自分が捨てた男に頼み事なんて、よっぽどあちらは切羽つまってんだよ」
「お互い女のわがままには弱いよな。――おい、俺がセブンスにリザーブ入れること、リモーネには言うなよ? 今度は部屋の鍵、ノブごと取り替えられそうだ」
「わかってるって」と苦笑混じりに答えたレオンの携帯が、不意に鳴っていた。
 モニターに表示された電話の相手を見て、その表情が深刻なものに変わる。
「悪い、急患だ。続きはまた今度な」
「もしかして、ノック・バックって奴か?」
「ああ、多分――ノーヴィス八分で行くから。状況は? うん……」
 電話で話しながら、ばたばたとなにやら怪しげな道具の準備をし始めたレオンの後ろ姿を、シュラはあきれ顔で眺めていた。
――何が壬沙子の頼み事だよ。しまりのない顔しやがって。
――・・・うわぁ、何持ってんだ、あれ。そら捨てられるぜ。
 寒々しい光景にレオンの処置室を出たシュラは、妙に生暖かい感触で、ふと自分の腕を見下ろす。
「しかも・・・ド藪医者だ」
 絆創膏は既に全体が真っ赤に染まり、含みきれなくなった血がぽたぽたと廊下に小さな池を作っていた。



  





 レオンが亮の部屋を訪れた時には、もう既に亮は正気を失い始めていた。
 ベッドの上の亮の足がもじもじとシーツを掻き、心配そうに抱き寄せるノーヴィスにしがみついたまま、少年はふるふると身体を震わせている。
「様態は?」
 近づいていくと亮の身体をノーヴィスから受け取り、自分の首に亮の腕を絡ませながらレオンが聞いた。
 ノーヴィスが詳しい経緯を説明すると、レオンは頷いてみせる。
「正しい処置だ。後は私に任せて、キミは自室へ下がっていなさい」
「で、ですが、私も何かお手伝いを――」
「処置は私一人の方がやりやすい。必要なら呼ぶから、それまでは別室で控えていてくれ」
 そう真剣な表情で言われれば、ノーヴィスはわかりましたと返事をするしかない。心配そうに亮を何度も見返しながら、ノーヴィスは隣室へと引き下がっていった。
「さ、亮くん。もう大丈夫だからね? レオン先生が、すぐに楽にしてあげるから」
 首根っこにぎゅっとしがみついた亮の顔を上げさせると、瞳を潤ませ荒い息をつく亮の表情に、レオンの顔がだらしなく緩んでいた。
 先ほどまでの名医然とした面影はどこにもない。
 しかし──
「せんせ…、ォレ、一人で、するぅ」
――ズガーンッ!
 レオンの背後にイカヅチが落ちる。
 亮の第一声は、レオンの希望するどれとも異なっていたのだ。
 どうやら彼はシドの元、一人でGMDの処理を行う訓練を積んでいたらしい。
――イカああああン!
 レオンの表情が深刻なものに切り替わっていた。
――あの、色事の欠片も知らん朴念仁男がぁっ!
「亮くん、無理はいけないよ? GMDは無理をすれば大きな事故に繋がる薬だ。今キミは体力も落ちている。とても一人じゃ処理できない」
「は…、で、も、――っ、ォレ、は、ずかしぃょぉ」
 頬を赤らめ睫毛を伏せる亮に、レオンは真面目な顔のまま微笑んでみせる。
「何も恥ずかしいことなんかないんだよ? 先生はお医者さんだからね。患者さんの亮くんは、安心して、先生に任せればいいんだ」
「ぉ、いしゃ、さん? ぉぃしゃ、さんだと、は…ずかしく、ない――」
「さ、横になって――レオン先生の診察ですからね?」
 戸惑いながらも言われるまま、亮はベッドに身体を横たえていた。
 レオンの手が亮の帯をほどくと、白地に桜の花の散らされた浴衣をはだけていく。
 ここ一月で驚くほど白くなった亮の肌に、いくつもの赤い情事の後が、浴衣同様桜の花びらの如く散っていた。
「胸の音を聞かせてね」
 レオンが用意していた聴診器をあて、亮の胸元を滑らせていく。
「っ、せんせぇ…、冷たいよぉ」
 レオンの手が動く度、亮の肌はぞくぞくと粟立ち敏感に反応を返してくる。
「動かないで――」
 桃色の胸の飾りを、レオンの左手がさわりとかすめた。
「ぁっ」
 それだけのことで亮の身体はひくんと跳ねる。
 レオンは聴診器でその部分をゆるりとこねてやった。
「っ――、ぁっ、はぁっ…、レォンせ…せぇ、そこ、ばっか、診察、なんで?」
 身体を震わせながらもされるままになっている亮は、切ない表情のまま不思議そうに見上げてくる。
「亮くんのここが、診察してくださいーって言ってるから」
「ォレの、ここ、が?」
「そう。先生にはわかるんだよ? 亮くんのおムネがもっと弄ってぇって言ってるの」
 起ち上がり始めたピンク色の尖りを、今度はレオンの指が転がしていた。
 亮はその指の動きにひくひくと身体を震わせる。
「せんせ…の、診察、き…ちぃぃよぉ」
 時間経過とレオンのゆっくりとした責めにより、既に亮の意識は完全にGMDの海に沈み込んでいた。
 もう一人で処理するような歯止めはきかなくなっている。
 レオンは腰元の浴衣に手を掛けると、ついに全ての着物を完全にはだけていた。
 しなやかな亮の肢体が現れると、レオンはため息混じりにうっとりとそれを見下ろす。
――うわぁ、名工制作のフィギュアみたい!
 レオンの大好きな日本のアニメキャラクターたちが、彼の脳裏を駆けめぐっていた。
「もっと気持ちのいい治療をしようね、亮くん」
 持ち込んだ道具袋の中から、ローションを取り出すと、言われるまま大人しくしている亮の胸に、たっぷりとたらしてやる。
 その冷たさに反応を示す亮の肌を、レオンの大きな手が、滑らかに滑り始めた。
 ぬるぬると何度も両の胸の飾りを手のひらが擦りあげ、亮はその度に切ない声で身体を捩る。
「それじゃ、治療を始めようか」
「――ちりょ…」
「そう、治療だよ」
 言いながらレオンは、取り出したピアスのような形をした胸用の電気器具を、亮の両胸の先端に、それぞれ挟み込むように取り付けていた。
 長くのばされたコードの先には、小さなコントロールボックスがついている。
 身体を起こし、不思議そうにそれに触れようとした亮の手を、レオンが優しく押さえていた。
「治療中は触っちゃダメ。先生の言いつけ、守れるね?」
「――はい。とおる、守れる、よ?」
――ふわぁぁぁああっ、かわぃぃぃいいっ。
 薬の影響下にある無邪気な亮の微笑みに、レオンの鼻からプッと血が噴き出す。
 首の後ろをトントンとやりながら、レオンは次々と道具を取り出し、亮の身体を再び横たえてやった。
 亮の表情を見つめながら、膝を立てさせ、足を大きく開かせる。
 ラバー製の手術用手袋を装着すると、たっぷりのローションを掛け亮の下肢に手を伸ばしていた。
「亮くんのびくんってする所はどこかなぁ?」
 言いながら、亮の起ち上がり掛けている幼いモノを握り、ゆっくりと擦り上げる。
「――ん、っ、せ、せぇ…、ぁっ、」
 くちゅくちゅと湿った音が手の間から漏れ、その度に亮の腰が堪えられないように揺れた。
 あっという間に痛いほど立ち上がった亮の未成熟な先端を、レオンの二本の指がくりくりと刺激する。
「ふぁっ、あっ、ひぅっ、」
 その指の動きで亮の身体が小さく痙攣する。
「ここ、びくんてなったねぇ」
「ぁっ、とぉる、びくんて、なた、の――」
 伏せた目にかかる亮の睫毛が、ふるふると揺れ、淡い照明で影を落としていた。
 その幻想的な美しさと、GMDの影響で退行を見せている亮の言葉遣いが相まって、レオンはまるで本当に生きたフィギュアを相手にしているような倒錯的な気分に陥っていく。
「ここはどうかなぁ?」
 レオンは亮の足下に回り込むと、足を大きく上げさせ、薄く色づく桜色の蕾へ、そろりと指を入れていた。
 中は狭いながらも柔らかく、ここ二日常に亮のここが使用されていたことを伺わせる。
 指先の感触で傷を見つけると、すぐさまベルカーノ能力でそれを塞いでいく。
 ゲボに対しての効きはあまり良くはないが、それでも身体やアルマに対しプラスに作用するこの力は、他の能力よりも受け入れられ易い。
 シュラには一欠片も使わなかった能力を、レオンは今全力投球だ。
「っ、んっ、せんせぇ、――っ、おゆび、あたかぃ」
 ベルカーノの力を暖かく感じるらしく、亮は気持ちよさそうに身を震わせる。
 レオンの指先が、前立腺の当たりを突くと、亮の身体が再びひくりと跳ね上がった。
「ひゃぅっ! はっ、せん、せぇっ! とおる、びくんてなたよぉっ」
「そうだね、ここもびくんてなったねぇ」
 レオンは甘やかな声でそう言うと、右手で亮の幼いモノを弄りながら、左手は亮の中を掻き回し始める。
「はっ、ぁっ、はぁっ、はっ、レォ、せ、せぇ、ぁっ、ぁっ、と、る、いぱい、びくんてなて、でちゃ…のぉっ」
 亮は半ば身体を起こし、足の間で自分を責め立てるレオンの頭に手を掛け、その快楽に必死に耐えていた。
 治療中に粗相をしてはいけないと、精一杯我慢しているようだった。
「いいよ、亮くんが気持ちよくなったら、いつでも出しなさい」
「っ、でも、でもぉ――っ」
「恥ずかしくなんかないよ? レオン先生はお医者さんだから、何にも恥ずかしくない」
「――っ、はずかし、く、なぃ…、っ、んっ、はっ、レォン、せ、せぇ、とぉる、みるく、でちゃ…ぁっ、ぁっ、はぁぁあああっ!!!」
 亮の腰ががくんと大きく震えると、ほとんど色の付いていない、淡いミルクがとろとろと亮のものを滑り落ちていく。
 それと同時に亮の身体が、力なくぱたりとシーツの上に倒れ込んでいた。
 荒い呼吸で胸を上下させる亮に、レオンが顔を寄せる。
 赤く色づいた唇が喘ぐ度、そこに唇を重ねたい欲望に駆られ、レオンはぶんぶんと首を振っていた。
――キスはダメ。素手はダメ。本番はダメ。お口で奉仕もダメ。
「お医者もつらいなぁ」
「せ…せぇ、ちゅ、…」
 ぐったりとしていた亮が腕を上げると、ねだるようにレオンの首にしがみついてくる。
「亮くん、ちゅはダメ。先生、怒られちゃうから――」
「ぃやぁ、ちゅ、するのっ。せんせと、とぉる、ちゅ、するのぉ」
――はああああっ、かわぅぃぃぃい!!! なんだ、この生き物わっっっ!!!
 レオンの頭がぐらぐらと揺れていた。
 思わず目の前に迫る禁断の果実に唇を添えそうになり、レオンはすんでの所で亮の身体を引き離す。
――いかぁぁああんっ! バレたら主治医をはずされてしまうっ!!!
 焦ったレオンは手に触れたコントロールボックスを取ると、そこについたスイッチをオンに入れていた。
 レオンに腕を伸ばしていた亮の身体がびくんと大きく跳ね上がり、ばさりとシーツへ倒れ込む。
「っ!!! やっ、ぁっ、ぁっ、はっ、ゃぁぁぁっ!」
 身体を反り返らせ、亮は突然の衝撃にひくひくと震えていた。
「せ、せぇ、なに? っ、ぁっ、とおる、の――、おムネ、おムネがぁっ」
 軽い電流を通された亮の胸の飾りは、これ以上ないほどツンと尖り、まるで少女の胸の如く痛々しいまでに張り詰めている。
 それでも言いつけ通り、亮はその部分へ触れず、必死にそれを堪えているようだった。
「亮くんのおムネは今、先生の治療中だよ? すぐ気持ちよくなるからねぇ」
 開いた唇から亮の小さな舌が覗き、浅く速い呼吸を繰り返している。
 ツンと尖った胸を反らせて、器具の快楽に震えながら耐えている亮の姿は、あまりにも淫らで蠱惑的だ。
 レオンはごくりと喉を鳴らすと、コントロールボックスのボリュームを徐々に上げていく。
「っ、はっ、ふぁっ、はぁあぁっ、レォ、せ…せ、とぉる、おムネ、ぴんってなって、へんに、なちゃう、よぉぉっ」
 さらに胸を反らし、腰を動かし始めた亮の足を抱え上げると、レオンはたっぷりとローションで濡らしたバイブレーターをひくつく蕾にあてがっていた。
「今度はここを治療しようね、亮くん」
「っ――、ぁっ、んんっ」
 禍々しい形をしたシリコン製のモノを、亮の中へゆっくりと沈めていく。
「ひぁっ、つめた、よぉっ」
 かなり大きめのものを用意したのだが、亮の後腔はキツいながらも滑らかにそれを飲み込んでいった。
「はい、全部入ったよ? こっちも治療を始めようか」
 最奥まで押し込んだまま、レオンはバイブのスイッチを入れる。
 鈍い振動音がし、レオン自慢のお道具は亮の内部で激しく暴れ始めていた。
「っ、ひぅっ、はっ、あっ、やぁっ、し、――」
 あられもなく腰を揺すり始めた亮の痴態に、レオンも次第に息を荒げていく。
 しかし、亮の喘ぎの中の聞き慣れない音に気づき、ふと耳を澄ませていた。
――し?
「シィっ、ぁっ、凍ぉちゃう、よぉっ! ――シィの、ぉきくて、とぉぅ、こわれちゃ、のぉっ!!!」
――ズガーンッ!!!
 いかづちが今度こそレオンを直撃する。
「――なんだよ。あの男。・・・結局凍らせるほどやってんじゃん」
「っ、ぁっ、あっ、ふゎぁぁぁぁああっ!!!」
 亮が甘い嬌声を上げ再び果てるのと同時に、レオンも別の意味で真っ白に果てていたのだった。
──シィか・・・。あいつめ。