■ 3-22 ■


「亮さんっ――、はぁ……」
 熱に浮かされたような息づかいで、滝沢は引き出した亮の左足のスニーカーと靴下を脱がせ、その細い足を撫でながらじっとりと舐めあげていく。
 時間はまだまだある。
 こんな亮へすぐに突っ込んでしまうのは惜しい。
 じっくり手間を掛け、時を掛け、ずっと渇望していたこの少年を犯しつくしたい。
 これは、滝沢がいつも金や力で買っていた亮に似た違う少年ではない。成坂亮、本人なのだ。
 数ヶ月前、亮を一度手に入れてからまた失い、滝沢の欲望は以前を遙かに増す熾烈な熱を帯びていた。一度知ってしまった至高の果実の味は滝沢の中の男を狂わせた。
 日々、何をしていてもどこにいても乾いている。
 どれだけ仕事に打ち込もうと、どれだけ上物の少年を陵辱しようと、決して滝沢の身体も心も満たされることはなかった。
 そうしてみれば、亮をGMD地獄に落としたのは滝沢であったが、実は滝沢自身が別の地獄に堕ちていたのかもしれないと、ふと思うことがある。
 そして今自分は、その地獄の中唯一の救済である少年を手に入れたのだ。
 透き通るように白いその足の弾力を楽しみながら、指先、土踏まず、くるぶし――そしてふくらはぎから膝裏を堪能し、柔らかな腿の内側を滝沢の舌がなめくじのように這い上る。
 ズボンも下着もあっさり剥ぎ取られ、薄いシャツを一枚羽織っただけの姿にされた亮は、自分の足下で息を荒げている男の姿すら見えていないように、ただただしゃくりあげていた。
「ぅぇぇぇっ、ぇっ、ひくっ、ぇ、ぇっ、」
 絶望で壊れてしまったような亮の様子。それを眺める度、滝沢は身体の奥底から湧き上がる性的興奮でむせ返りそうだった。
 ――今度こそ、亮さんは私のものとなったのだ!
 ――これは、私のものだ!
 ――私の、亮さん……
 夢のような征服感で震える指先で、滝沢は少年の中心に揺れる幼い花心に触れる。
 十数分に及ぶ滝沢の愛撫にそこは兆しも見せていない。
 亮の身体を鎖に任せ、後ろに倒れ込ませながら足を開かせると、滝沢は柔らかにうなだれた少年のそれをゆっくりと口に含んでいた。
「っ、ぇぇぇっ、ぇっ、ぃぅっ、ん、ゃぁっ」
 変わらず涙に濡れながらも、亮はようやく抵抗の色を示し、足をばたつかせる。
 しかし亮のそんな声など聞こえないように、滝沢は強い力で足をつかみ、ちゅくちゅくとことさら音を大きく立てながら亮の幼根を口中で弄んだ。
 以前マンションで滝沢が亮を監禁した折より、セラ内の亮は随分と幼い。
 手に触れる亮の身体の小ささが、滝沢をさらに興奮させているようだった。
「ぃぁっ、っ、ぇぇぇっ、ぇぅっ、し……、シィ、しいっ!」
 泣きながら亮は身体をひねり、それでも信じたいその名前を口にする。首輪も手枷も亮の声をかき消すように、ザリザリと重たい金属音を放っていた。
「ぅぇぇっ、ぇっ、とぉぅ、いいこにするから、むかえ、きてぇっ。ぇぅっ、も、ピ、マンも、ちゃんと、たべる。お、かし、も、ひくっ、が、まん、すぅ……。しぃ、ぉしごと、い、くときも、ぇぐっ、も、なかなぃ、からぁっ、」
 泣きじゃくる合間。聞こえもしない相手に必死に懺悔する亮に、滝沢はにやにやと隠しきれない感喜の笑みを浮かべながら、唾液を絡めた指先をつっぷりと幼い薄桃の窄まりに沈めていく。
 亮の身体がびくんと固まり、ぶるぶると震えた。
 狭くきつい少年の内部は熱く、亮が怯え震える度にひくひくと痙攣し滝沢の指に絡みつく。
「ぅぅっ、……、 っ、ぁっ、ぉしり、ゃぁっ、ぇぅっ」
「まだそんなワガママを言って――、だから誰も迎えに来ないんですよ。本当にどうしようもないバカな子だ。んん?」
 骨張った中指を根本までねじ込むと、滝沢は僅かに兆しを見せ始めた少年の花心に舌を這わせた。
 そのまま口中に頬張り、指の数を増やしながら亮の中へじらすように出し入れする。
「ぁ、っ、ゃ、たきざ、っ、ゃぁっ」
 張り詰め始めた少年の幼い先端を、滝沢の前歯がこりりと噛んでいた。
「ぃぐっ!」
 亮の身体が跳ね上がり、とろとろと淡い白濁液が滝沢の口中に広がる。
 滝沢は喉を鳴らしてそれを飲み込んでいた。
「っ、はぁ……、亮さん、あなたはまだこんな子供なのに、後ろを弄られてこんな嫌らしいミルクを出したりして――」
 滝沢は亮の中から指を引き抜くと、己のスラックスの前面をくつろげ始める。
 熱く張り詰めた己のそれを取り出しながら、荒い呼吸で亮の身体に覆い被さり、亮の唇を塞ぐ。
「ぅ――っ、ぃぁ――ん!」
 顔を背けようとする亮の後頭部を鷲づかみにし固定させると、無理矢理その小さな頤をこじあけ、尖らせた舌先を進入させていた。
 小さな亮の口中は、滝沢の長い舌だけでいっぱいになり、暴れていた亮は息苦しさですぐにぐったりとなる。
 じゅぶりと滴る音を立てながら少年の口中を堪能しつつ、滝沢の手は亮の可愛らしい胸の尖りに悪戯を始めていた。
「ん、ぅ――、っ、……」
 二本の指でつまみ上げ、親指の腹でこりこりと転がしてやると、亮はその小さな身体をくねらせ、快感に耐えるように震えた。
 滝沢は熱く滾った己の物を亮の幼い花心にこすりつけながら、腰を上下させる。
 滝沢の先端から溢れる透明な先走りと、彼が舐め回したことによる唾液で、それはぬるぬると滑りながら亮の幼根や腹を蹂躙した。
「っ、はっ、はっ、……、亮、さん――、わかりますか? 滝沢のものと亮さんのものが擦れあって――、っく、ぁ、気持ちいいでしょう?」
 唇を解放すると、朦朧とした少年の顔とその性器とを代わる代わるに視姦し、滝沢は大きく――次第に早く腰をグラインドさせていく。
「ぇぇぇっ、ぃぁっ、ぁっ、ぁ、ぁ、ぇぇっ」
 泣きじゃくりながらも次第に亮の身体は無理矢理高められていく。
 滝沢の黒く大きなものと自分のものが熱く擦れあい絡み合うのを見るのが嫌で、少年は顔を背け、何度もシィの名を呼び続けた。
「まだそんなことを言っているのですか。っ、――亮さん、あなたは捨てられたんです。もう誰も迎えになど来ない。あなたは私に――、この滝沢にかしづいて、私の言うとおりはい、はいと言うことを聞かなくては」
「ぃやぁっ、たきざ、きらい! っ、たきざ、あっちいけっ!」
 亮はありったけの勇気を振り絞り、滝沢を拒絶する。
 涙で赤く腫れた目で精一杯滝沢を睨むと、身体全体でいやいやをした。
 強くならなくてはいけない。そうガーネット様も言っていた。
 強くならなくてはきっと、誰も迎えに来てくれないのだ。
 弱虫はきっとみんないらないのだ。
 だから亮は怯える心を奮い立たせて、滝沢へ吠え掛かる。
 こぼれ落ちる涙を封じ込めようと、ぐっと眼に力を入れる。
 だが、耳を倒し尻尾の垂れた子犬の必死の威嚇は、目の前の男にとって苛立ちと興奮を募らせるだけのスパイスに過ぎない。
 滝沢は亮のぐっと凝らした瞳を正面から見据えると、口の両端を耳まで引き上げ、歯の隙間から笑い声を漏らす。
 しかしその目は決して笑っていない。
「なんて悪い子だ――、まるであの頃と変わっていない。これだけ私があなたのためを思って色々してさしあげているのに、本当に物わかりの悪い――、」
「――ぃっ」
 亮が拒絶の言葉を吐く前に、滝沢の腕が振り上げられ、亮のふっくらとした頬を力任せに打っていた。
 パシンと小気味いい音を立て、亮は背後へ弾き飛ばされる。
 しかし鎖につながれた腕に引かれ、その身体はすぐに滝沢の前に据えられていた。
「亮さん、悪い子だ――、どの口がそんなことを言いました? んんん?」
 滝沢は痛みと衝撃で呆然とした亮の髪をつかむと上を向かせ、少年の顔を跨ぐように立ちはだかる。
 反り返る黒々とした屹立を亮の唇に押し当て、無理矢理開かせた口に強引にねじ込んでいく。
「っぅ、ぁぐ――、ぇぁっ」
 小さな亮にはそれは耐えられないほど大きく、ねじ込まれる苦しみにぼたぼたと堪えていた涙がこぼれ落ちた。
 何度も吐きそうにえづく亮を眺め下ろし、滝沢は張り付いた笑みのまま亮の髪を引き、腰を突き出す。
 口を閉じようとする亮の動きを感じると、すぐに強く顎をつかみ低い声で囁いていた。
「歯を立てたら迎えの電話を二度としませんよ?」
 亮がその言葉にぴくりと反応する。
「お電話をしなければ、誰も亮さんがここにいることがわからないですよねぇ?」
「ぇ――、っ、ぅ」
 力の抜けた亮の小さな頭をつかみ、まるでおもちゃでも扱うように滝沢は亮の細いのど元へ腰を突き入れ始めた。
「っ、はっ、――、私の、いう、ことを、ちゃんときける――、っ、おりこうになれば――、きっと、お迎えも、来てくれますよ――っ、ねぇ、とおる、さん――」
「ぇぅっ、――ぇ、……ぇぁぁっ」
 喉を突かれる苦しさで亮は嘔吐きあげ、喉も身体も痙攣させる。
「っ、ぉ、くぉぉぉっ……」
 滝沢の屹立が亮の蠢く舌と筋肉の動きで引き絞られ、滝沢はびくんと身体を震わせると、恍惚とした目を細め、魚のように口を開けたまま大量の精を放っていた。
 ごぶりと音をたて、亮の喉の奥に何度も注ぎ込む。
「っ、げはっ、ぇほっ、――ぇぇぇっ」
 喉の奥から太く長いそれを引き抜かれた亮は、むせ返り苦しげに咳き込んだ。
 再び、泣き声が口を突いて零れる。
 どうすればいいか、わからなかった。
 どうすれば、あの暖かくて優しい場所に戻れるのか。
 強くならなきゃ。
 いい子にしなきゃ。
 採血しなきゃ。
 滝沢をやっつけなきゃ。
 滝沢の言うことをきかなきゃ。
 おりこうに、ならなきゃ。
 シィの所に、帰りたい――。
「……シィ」
 吐く息に混ざり、呼吸音に紛れそうな声が亮の口から零れる。
 その名だけが、亮にとって確かな響きを持っていた。