■ 2-40 ■



「っ、――、ん・・・」
 ほぼ意識のない亮の口から吐息が漏れる。
 バイオレットはひたすら亮の幼い性器に舌を這わせ、深く吸い上げていた。
 既に男の肉体は水晶のベッドをも飲み込み、まるで巨大な四角い籠かと見紛うものへ姿を変貌させている。
 無数の細い柱が周囲を取り囲み、亮はそこに捕らわれた小鳥のようであった。
 だらりと垂らされた両手と揺らぐ浴衣の袂は白い羽根そのものだ。
 天井の編み目から中心部に垂れ下がるバイオレットの身体が、籠に入り込んだ白蛇の如く浴衣を着た少年を巻き取り、高く抱え上げた腰へその知的で気品に満ちた顔を埋めていた。
 乱された裾から伸びるすらりとした足は大きく開かれ、それぞれ天井の梁から伸びる蔓に絡め取られている。
 よく見ればそれは薔薇の蔓であり、所々に張り出した太い棘が、亮の白い腿やふくらはぎに食い込み、紅い糸を流させていた。
『っ、はぁ……、はぁ、っ、トール…』
――ちゅぷ…ぴちゃ…
 既に人ではなくなった声はバイオレットの声帯ではなく籠全体を震動させて生み出され、バイオレットの唇は濡れた音を滴らせつつ亮の柔らかな下腹部をしゃぶり続けている。
 透き通る檻と化した己の中に亮を囲い、バイオレットは幸せそうに長い身体をくねらせていた。
 水晶の梁に巻き付いた無数の薔薇の蔓が、バイオレットの興奮に呼応するように伸ばされると、亮の襟元や裾からするすると入り込み、細い腕や腰を巻き上げ優しく締め上げる。
「――、っ、」
 その鈍い痛みに亮の瞼が微かに震え、うっすらと瞳が開けられる。
 ぴくりと動いた亮の指先にいち早く反応すると、バイオレットはようやく濡れそぼった亮の幼いものから口を離す。
 長時間の愛撫で湿り気を帯びた口ひげが淫猥に光る。
 波打つ身体を蠢かし吐息のかかる位置から亮の顔をうっとりと眺めおろしながら、ソヴィロ・バイオレットは骨張った指先で亮の唇をなぞっていた。
『おはよう、トール。今日は一日何をして遊ぼうか。屋敷でパーティーを開くかね? それとも二人で野駆けでもしようか』
 じんじんと体の芯に響く割れた音に揺さぶられ、亮は僅かに首を傾げる。
 自分が今何をしているのか、どうしてバイオレットがここにいるのかわからない。
 今日は朝からバイオレットがゲストに入っていたんだっけな――。ノーヴィスにまだ朝のお茶も入れてもらっていないのに、何だか変だ。
 ざわざわと響く波の音も、冷たく湿った風も、上に広がる星空も、綺麗で透明なたくさんの梁も。
 何もかもが軋んだ亮の脳細胞を混乱させる。
 もしかして、まだ自分は眠ったままで夢を見ているのかもしれない。
 亮が何も言葉を発しないことを気に掛けることもなく、バイオレットは亮の柔らかな唇を割れた舌先でちろちろと舐めると、生臭い息を吐きかけながら深く唇を重ねていく。
 長い舌を潜り込ませ、亮の上顎をくすぐるように擦り上げる。
 含みきれないほどの唾液を亮の口中へ注ぎ込み、可愛らしい舌を吸い上げてやる。
『トール・・・、はぁ、っ、はぁ、…トール、可愛い私のお人形――』
 まさに人形のようにされるままの亮の身体を抱きしめ、右手が悪戯に小さな胸の突起を転がしている。
 柔らかだったその部分が自分の愛撫でつんと尖りを見せ始めると、バイオレットはそれを亮へ知らしめるかのようにつまみ上げていた。
『感じているんだね、トール・・・。おじさまの指に弄られて、トールは感じているんだ。ああ――おまえはまだこんな子供だというのに』
 亮の唇を貪ったまま、バイオレットの声が共鳴する。
 亮の腰を一巻きするぬめりを帯びた全身が、興奮したように蠕動を繰り返していた。
 その動きによってゆるみ始めた帯は解かれ、はらりと浴衣の裾が落ちる。
 亮の磁器のような素肌には、蔓による戒めで至る所に痛々しい紅の珠が浮かび上がっていた。
 その絵を目に映したバイオレットは、唇から頤、白いのど元、鎖骨のくぼみ、脇の下、胸の桃色へと、ゆっくりゆっくり捏ねるように舌を這わせていく。
 両手の指もそれを追い、亮のパーツ、一つ一つを愛でるように丹念に撫でていく。
「っ、・・・、ぁ、」
 ぼんやりと仰向けに空を見上げたままの亮の身体が、ちろちろと出し入れされるおじさまの舌先にぴくんと反応を返す。
 その亮の微かな動きに、長い身体の下部にそそり立つ赤黒い逸物は、反り返ったままびくんびくんと脈打ち、先端から下品な陰汁を滴らせた。
 気品と威厳に満ちた裁判長の顔で胸の飾りにキスを落としながら、我慢の限界にだらだらと涎を垂らした下衆な下半身を亮の白桃の間にすり寄せる。
『トール…、はぁ、…はぁっ、トール、トオオオルっ、は、はぁ…、おじ、さまの、キャンディが、欲しいかね? そうか、欲しいか。欲しいんだね。はぁっ、――はぁ、おじさま、の、甘ぁいキャンディを、おまえのここへ――』
 反り返る熱い屹立を滑らせ、くちゅくちゅと音を立てて小さな窄まりの上を上下させる。
「――ん…」
 そのあまりの熱に、亮は蕾をひくりと動かすと反射的に身体を捩る。
 しかし空中で全身を蔓に絡め取られ、バイオレットの胴体に巻き付かれた状態では、このささやかな防御行動は何の効力も現わさない。
 それどころか亮の動きを喜ぶように、ざわざわと檻全体が揺れ、バイオレットの屹立は更に体積を増していく。
『あああぁぁあああ、トオオオオオル、愛しているよ、愛しているよ、愛しているよおおおぉおっ』
 バイオレットは全身を奮わせ吠えると、亮の中へ脈打つ自身を突き立てていた。
「っ――!! んぁ・・・は・・・」
 その衝撃で弓なりになる亮の身体を更に巻き締め、バイオレットの熱い屹立が埋め込まれていく。
 無理矢理ねじ込まれる侵入者を、亮の内部はそれでも吸い付き蠢いて責め立てる。
『むぉっ・・・、ぉぉぉっ』
 口を半開きにし恍惚とした表情でバイオレットは中空に視線を彷徨わせた。
 奥まで一気に腰を突き入れると、頬を亮の胸につけたまま激しく腰の蠕動を繰り返し始める。
――ぐちゅっ、ずちゅっ・・・
 湿った音がリズミカルに接合点から上がり、バイオレットは自ら生み出すその音色にさらに興奮を高めていく。
 人形の如く清純に、従順に、揺すられ続ける亮の様子と、それと相反するようにバイオレットを締め付ける内部の動き。
 その対比は淫奔を極めた。
 厳格な裁判長は、下半身だけでなく己の脳細胞からも大量の陰汁が滲み出し、全身を駆けめぐる妄想に身悶えする。
 ぶるりと唇の端が痙攣した。
 亮を突き上げながら、目の前に少女のように立ち上がる胸の飾りに長い舌を絡ませ、ひとしきり転がすと、ナメクジのように下へ下へと這わせていく。
 あの可愛らしい亮のキャンディが見たかった。
 今のバイオレットの身体は、亮のあらゆる部分を唇で愛しながらも、亮の中へ突き入れ続けることが出来る。
 ああ、なんて素晴らしいのだろう!
 華奢な肋骨、愛らしい臍、造形美に満ちた腰骨。
 完全に瞳孔の開ききったバイオレットの鼻先に、目一杯身を張り詰めさせた幼いものが差し出される。
 とろとろと先走りで濡れた可愛らしいそれは紅く色づき、バイオレットの挿入に合わせてびくんびくんと生物的な反応を見せていた。
 バイオレットの呼気が病的に早まっていく。
『はぁ・・・、っ、はぁっ・・・、ぁぁ、トール、おじさまに突かれる度、気持ちよさそうにキャンディを反り返らせて――、なんていけない子だろう、なんて、いけ、ない・・っ、はぁ、子だ、』
 言葉の合間に我慢が出来ずバイオレットは亮のひくつくものを唇で包み込んでいた。
 割れた細い舌先を僅かに覗く少年の先端に潜り込ませつつ、全体を強く深く吸い上げる。
 そして左手は亮の柔らかな尻の丸みを捏ねまわし、右手の指先はキャンディーの根本に下がる未成熟な二つの塊を優しく転がしている。
「っ、ぅ――、ん、・・・、」
 朦朧とした意識の中で意志とは無関係に絶頂を促され、亮は手足の指先を突っ張らせ、びくんびくんと二度、身体を震わせた。
 幼い屹立の先端から溢れ出た欲望の雫を己の口中に受け、バイオレットは鼻を抜けるその青い香りを堪能しながら、時間を掛けて飲み下す。
 絶頂に達した少年の中は不規則な痙攣を連鎖させ、バイオレットのものを健気なまでに愛撫する。
『っ、はぁ、っ、はぁっ、はぁっ、おじさま、気持ちいいよ、トール、おじさま、いきそうだ――、トールの中で、おじさま、いってしまうよ――』
 無心に鼻呼吸を繰り返しながら、裁判長は少年の秘部に一層激しく腰を突き入れていた。
――ずちゅ、ぐぷっ、ちゅ…
 次第に動きが早まっていく。
 それに伴いバイオレットは徐々に上半身を垂直に立て、一心不乱に抜き差しを繰り返す。
 そしてついに身体を反り返らせると、長い身体をくねらせて腰を打ち付け、蠢く舌を前面にぴんと突き出していた。
 まるで神経に直接触れるような快感が、バイオレットの脳髄を突き抜ける。
『はぁあああああぁあああぁぁぁぁっ、ぃぃぃぃいいいいいっ、いいっ、出るっ、いいっ、トオルゥゥゥゥ!!』
 びゅくびゅくと音を立て、大量の熱が亮の中に叩き付けられた。
 バイオレットは恍惚の顔のまま何度も腰を痙攣させ、口の端から唾液の糸をたらたらと滴らせる。
 バイオレットに注ぎ込まれたたっぷりとした白濁液の熱に、亮は小刻みに震え「ひぅんっ」と小さく鳴いていた。
 その声を聞きつけたのかどうか――。
 バイオレットの白蛇の身体が、再び、ずるり――と、動き出す。